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人類学者・心理学者が明かす、“よく当たる”占い・性格診断・適性検査・心理テストの仕組み

 先日、ある企業の社員研修に参加させていただいた。その中で、各従業員が事前に受けた性格診断や適性検査の結果を部署ごとのグループで振り返る機会があった。彼らは診断結果が記された用紙をみながら口々に『当たってる!』『すごい!』『その通り!』と驚きの声をあげていた。

 こうした感想や印象は、性格診断や適性検査に限らず、各種の占いや心理テストでも耳にするものだ。
 なぜ人は、占いや心理テスト、性格診断や適性検査にそのような感想や印象を抱きやすいのか。これには、特殊な心理的作用が関係している。この心理的作用は、心理学用語で『バーナム効果』という。

バーナム効果とは

 バーナム効果とは、“誰にでも当てはまるような曖昧かつ抽象的な内容を、『自分に当てはまる』と認識する心理現象である。1956年にアメリカの心理学者であるポール・ミールによって名付けられた。
 ポール・ミールによる実験では、被験者に心理検査を実施し、事前に用意していた結果(例:『あなたは実は○○な人間です』)を提示すると、90%以上の被験者が“自分に当てはまる”と回答した。

 この現象は、ヒトの人格や性格がドラマや小説などの登場人物とは異なり多面性の側面を持つことによって生じる。すなわち、ヒトには『温かい面/冷たい面』『明るい面/暗い面』『強い面/弱い面』『男性らしい面/女性らしい面』など、性質ごとにその両面を少なからず持ち合わせているため、そのどちらの面で『あなたは実は○○という面がある』と告げられても『なるほど』と納得する傾向にある。『○型の人は~』『○月生まれの人は~』といわれて“当たっている”と錯覚するのも同様の仕組みである。
 なお、この現象は権威に対する信頼があるといっそう生じやすくなる傾向がある。例えば、高名な占い師や一流といわれる企業・研究機関などがその例である。その権威性が、“よく当たる”占い・性格診断・適性検査・心理テストを生み出している。

バーナム効果とビジネス

 バーナム効果を活用したビジネスのひとつが、各種の占いや心理テストである。『あなたは明るそうに見えて、実は悩みを抱えている』『普段は穏やかだが、周囲が理解できないようなことで感情的になることがある』など、ヒトの二面性ゆえに誰にでも当てはまるようなことでヒトの共感を得て、収益を得るビジネスモデルが存在する。

 聞き手や読み手が『自分にあてはまる』と感じるバーナム効果は、営業や広告の世界でも活用されている。例えば、『何を試しても決してやせられなかったあなたへ』(ダイエットサプリ)、『実は“ムダが多いかもしれない”と思っているなら』(保険)、『上司や同僚と合わないと思ってるアナタ』(転職サイト)、『今の生活に不自由さを感じていませんか?』(セミナー)など、“(多くの人に当てはまるが、)特に自分に強く当てはまる”と思わせるフレーズで訴求する手法が多くみられる。これらの業界では、バーナム効果を活用して“当事者意識”を持たせることで顧客の獲得を実現している。

バーナム効果は、賢く考えるきっかけに

 上述したように、“よく当たる”占いや心理テストには仕組みがある。これは、科学的な根拠のない占いや心理テストに限らず、統計や科学的手法に基づくとされる性格診断や適性検査にも同様のことがいえる。各種の研究機関や人材サービス企業が実施する多くの性格診断や適性検査の中には精度の高いものもあると考えられるが、バーナム効果の性質から被験者は“精度が低くても”当たっていると錯覚することになる。
 それゆえ、ヒトはそれらの結果を盲信することなく、さまざまな観点から自身を見つめ直し、賢く考えることが大切となる。

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