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『ドイツ戦車問題』にみる統計と推論の重要性。学者や学生だけでなく、ビジネスマンも押さえておきたいスキル

 8月10日(金)のYAHOO!ニュースに、“「製造番号」から製造数を推測する簡単な方法”が紹介されていた。この方法は、断片的な情報から全体の数を推測する方法である。

一部の情報から全体を推論する

 あるメーカーの商品に不良品が出たとする。消費者からクレームの電話が相次ぎ、早急に被害を止めなくてはならない。対策を立てるには、どのくらいの数の不良品が出回ったのかの推測が必要となる。このような場合は、ゆっくりと時間や手間をかけて正確な数を当てるよりも、迅速に大まかな数を推測することが重要となる。全体の数を大まかに推測できることで、対応策が考えられるためである。
 それでは、どのようにして全体の数を推測すればよいか。ここで用いられるのは、『統計的推定』という手法である。

例:高級腕時計の製造数の推定

 ある時計メーカーでは、オーダーメイドで製造する高級腕時計に、製造年とともに1、2、3、……と、ひとつずつ増加するシリアルナンバーをつけているとする。
 ある年に製造した腕時計を無作為に10個取り出してシリアルナンバーを確認したところ、以下の数字が得られた。

『415』『252』『150』『693』『528』『115』『684』『760』『86』『325』

 この場合、メーカーはこの年に何個の腕時計を製造したと推測できるか。無作為に取り出したシリアルナンバーの最大値が760であることから少なくとも760個の高級腕時計を製造したことが分かるが、問題はこれよりもどれくらい上乗せして製造数を推測すべきかという点である。

 このような場合、統計的には【この最大値を、取り出した個数で割り算して、そこから1を差し引いた数だけ上乗せをする】のが最適な数値となる。これを式で表すと、以下のようになる。

【推定値=サンプルの最大値+(サンプルの最大値÷サンプル数)-1】

 この式を用いると、

【推定値=760+(760÷10)-1】

となり、推定値は『760+76-1=835』となる。

第二次世界大戦の『ドイツ戦車問題』

 この統計手法は、第二次大戦中に用いられた手法である。かつて連合国(アメリカ・イギリス・ソ連)は、敵国であるドイツがどれほどの戦車を生産・保有しているかについて解くことを考えた。そこで生み出された手法が、連合国軍が捕獲したドイツ軍の戦車のギアに記されているシリアルナンバーを基にして生産車両数を推定するという方法だった。なお、連合国はこの方法と並行して、情報機関を駆使して別途で生産車両数を算出している。その情報機関が算出した推定台数は、1,550台だった。これに対して、統計手法を用いて算出された推定台数は327台だった。実に、4倍以上の差があった。

 それでは、実際のドイツの生産車両数は何台だったのか。ドイツ軍の記録によると、342台だった。情報機関の推定値は誤差が+1,208台であったのに対して、統計手法によって算出された推定値では誤差が+15台だった。

統計を推論に用いる

 学術の世界にせよビジネスの世界にせよ、全体の情報が得られずに一部の情報のみで対応が迫られる場合がある。そのような場合、さまざまな統計と推論方法を駆使することで、正解に近い数値を算出することができる。
 学者や学生であれビジネスマンであれ、日々の生活の中でこうした統計的推定を押さえておくことは重要といえる。

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