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他人のための意思決定と自身のための意思決定では、活動する脳の領域が異なる。

 他人のためにリスクのある意思決定を行うことは、医療場面やファイナンス場面など、ヒトの社会で広く見られる。自身のためのリスクのある意思決定では、平均的に期待できる結果だけでなく、最悪のケースも想定されることが分かっている。これに対して、他人のためのリスク意思決定における神経基盤や特徴は、これまでの研究では分かっていなかった。

 順天堂大学と東京大学の研究チームは、相手の視点に立って考えることに関わる脳部位である『右側頭頭頂接合部』に注目し、他人のために経済的なリスクのある意思決定を行う場合に、最悪のケースに対して脳活動が見られるのか、それともリスクに中立な平均的な結果に対して脳活動が見られるのかを調べた。また、他人に対する情動的な共感が脳活動にどのように影響するのかも調べた。

 この研究では、くじ箱選択課題が行われた。実験参加者は、2つのくじ箱から1つを選ぶ。選択肢となるくじ箱には高中低の3つの金額が示されていて、それぞれ等確率(1/3)で当たる。

【くじA】
・720円
・1,080円
・1,800円

【くじB】
・510円
・540円
・2,850円

 この例では、平均値の高さを重視する場合は【くじB】を、最低額の高さを重視する場合は【くじA】を選択することになる。この課題をひとりあたり、自身のためと他人のために36回ずつ行った。実験参加者は、自身のときに最低額の高い選択肢を多く見る傾向があったのに対して、他人のときにはどちらの選択肢も同じくらい見る傾向があった。この結果から、自身のための意思決定では最悪のケースのうち、より良い結果の選択肢への関心が見られるが、他人のための意思決定では偏りなくどちらの選択肢も考慮していたことが分かる。

 相手の視点に立って考えることに関わる脳部位である“右側頭頭頂接合部”は、自身の場合には最悪のケースに反応する活動が見られ、他人の場合にはリスクに対して中立である平均に反応する活動が見られた。なお、他人の場合に最悪のケースに反応する脳活動は、共感的関心の強さと相関することが分かった。すなわち、自身と他人のための意思決定における脳の働きは、リスクに対して異なることが分かった。

 この研究の成果は、他人のための意思決定が自身のための意思決定とは異なる脳活動に基づくことを示している。このことから、意思決定においては自身と他人の違いがあることを考慮することが重要となるといえる。

◇参考サイト
順天堂大学

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