人類学者の雑記ブログ(脳科学から統治理論まで、理系文系幅広く。)

  1. 経済・政治・社会
  2. 53 view

子どもの学力は、父親よりも母親の存在に左右される可能性がある。【収入・学歴・接触時間・蔵書数などに基づく調査結果】

 小学6年と中学3年の全員を対象に、毎年4月に実施されている文部科学省の『全国学力・学習状況調査』(全国学力テスト)。それぞれの対象学年で100万人以上が一斉に受ける国内最大の調査ある。また、テストと同時に保護者対象のアンケート調査もおこなわれている。

 調査結果の分析では、小6と中3の児童生徒の保護者から無作為に10万人規模が抽出されている。保護者の年収や学歴といった家庭の社会・経済的背景を指標化して4階層に分け、テストの平均正答率との相関関係が分析される。分析は2013年度と2017年度に実施され、その調査結果からは『親の収入や学歴が高いほど児童生徒の学力が高い』といった傾向が浮かび上がっている。

 今年の6月に公表された2017年度の調査結果でも、学歴や収入が最も高い世帯は最も低い世帯と比べて基礎的な数学A問題では24.2ポイントの差が付いていた。
 一方で、学歴や年収が高くない世帯でも『日常生活で本や新聞に親しむことや、規則正しい生活を促している家庭では好成績の傾向がある』といった点が明らかになっている。すなわち、規律正しい生活と好奇心、勉強への一定の意欲があれば、学習で工夫を加えれば家庭環境を克服できる可能性が示された。

父親の学歴よりも母親の学歴との関係性がみられた

 今回の調査では、『家庭環境と子供の学力』の章にて『200万円未満』から『1,500万円以上』まで、100万円刻みで世帯年収と学力の関係が分析されている。年収の高さに比例して正答率の高さも増しているが、注目されるのは“ある程度の高さの年収世帯になると『年収と学力』が直線的な関係を示さない”という点である。例えば、『年収1,200~1,500万円』世帯の生徒の平均正答率は、『年収1,500万円以上』の世帯に比べて国語A・B、数学A・Bのすべてで上回っている。

 保護者の学歴と児童生徒の学力との関係も注目される。保護者の学歴が高いほど児童生徒の学力が高い傾向がみられ、より詳しくみると児童生徒の学力は父親の学歴よりも母親の学歴との関係性がより強く現れている。

 中3の数学Bでは、父親の最終学歴が『高等学校・高等専修学校』のケースであれば正答率は44.1%、『大学』になると56.5%になり、その差は12.4ポイントである。一方で、母親の最終学歴が『高等学校・高等専修学校』であれば43.4%、『大学』になると60.0%になり、差は16.6ポイントに広がる。すなわち、父親の学歴にともなう差よりも開きがみられる。

親の単身赴任と子どもの学力との関係性

 2017年度調査では、新たに保護者の単身赴任と児童生徒の学力との関係も対象となった。その結果、『父親が単身赴任している子どもの学力は、そうでない子どもより高い』という傾向がみられた。データでみると、小6と中3の全科目で『父親単身赴任』の児童生徒の正答率がそうでないケースを上回り、中3の数学Aでは3.9ポイントの差がついた。
 一方、母親が単身赴任しているケースでは逆の結果となった。母親と同居しているケースに比べて児童生徒の正答率は10ポイント程度低くなり、中3の国語Bでは52.1%にとどまった。同居しているケースの72.5%と比べて、20.4ポイントの差が付いた。

 上述した母親の最終学歴と学力との関係と合わせて考えれば、子どもの学力に対する母親の存在の影響は大きいものであると考えられる。

父親は遅く帰ってきたほうが、子どもの学力が伸びる可能性

 『保護者の帰宅時間と学力』という調査に関しては、父親については22時以降の帰宅(早朝帰宅を含む)という家庭の子どもの学力が最も高いことが明らかになった。小6の国語Aでみると、父親の帰宅時間帯別の正答率は以下のようになる。

・就業していない:68.9%
・16時より前:72.0%
・16~18時:72.4%
・18~20時:74.6%
・20~22時:77.0%
・22時以降:77.9%
・交替制勤務などで帰宅時間が決まっていない:72.8%

 これらの数値をみれば、『父親の不在により、子どもが自宅で勉強に集中できる環境がある』とも捉えることができる。もっとも、こうした数値から結論を出すのは早計といえる。例えば国語Aの正答率について、年収や最終学歴など家庭の社会・経済的背景を指標化して4階層(Lowest、Lower middle、Upper middle、Highest)別にみると、遅い帰宅時間のほうが若干高いが、父親の帰宅時間と学力との間に明確な関係はみられなくなる。社会・経済的背景がよく似た世帯の子どもには、それほど学力に違いがないといえる。

家庭の蔵書数が多いほど、子どもの学力は高い

 家庭の蔵書数と学力との関係も、調査結果として示されている。漫画や雑誌、子ども向けの本を除いた蔵書が多いほど、子どもの学力が高い傾向がみられた。特に、国語より算数・数学の正答率で差が開く傾向があった。中3の国語Aでは『0~10冊』世帯の生徒の正答率は70.4%だったのに対して、『501冊以上』は85.4%で15ポイントの開きがあった。
 一方、数学Aでは『0~10冊』が55.0%、『501冊以上』は75.7%となり、20.7ポイントもの差がついた。家庭にある子ども向けの本と学力の関係でも、冊数が多いほど学力が高くなる関係がみられた。

『相関関係』であって『因果関係』ではないという点に注意

 これまでにみてきた結果は、すべて『相関関係』であって『因果関係』ではない。すなわち、“○○の場合には□□になる傾向がみられる”というものであって、“○○の場合には□□になる”というものではない。とはいえ、一定の関係性があるといえるので、子どもの教育環境を考える上でひとつの参考にはなるといえる。

◇参考サイト
子どもの学力は「母親の学歴」で決まる…? 文科省の衝撃レポート

経済・政治・社会の最近記事

  1. 100年前の日本人が予測した100年後の日本【過去の人は未来をどう予想したか】

  2. 子どもの学力は、父親よりも母親の存在に左右される可能性がある。【収入・学歴・接触時間・蔵書…

  3. 『国立大学法人化』と『科学研究の衰退』

  4. 売上を伸ばすための心理学

  5. 所得や学歴よりも『自己決定』が幸福度を上げるという研究結果(2万人を調査)

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP