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『おばあちゃん効果』と『おばあちゃん仮説』は別物。人類学者が違いを簡潔に解説

 生命科学や人類学の分野には、『おばあちゃん効果』や『おばあちゃん仮説』という用語がある。このふたつは、似ているようで異なる。以下では、その違いについて説明する。

おばあちゃん効果

 ヒトの卵巣は胎児期に発生が始まり、卵は第一減数分裂前期で停止した状態で長い年月を過ごす。すなわち、胎児は自身が母体の子宮から産道を通って胎外に生み出される以前から、自らの体内に卵巣の基礎を発生させている。

 母体の妊娠中の栄養条件の悪化や環境の変化は、胎児の卵成熟に影響をおよぼす可能性があることが指摘されている。胎児の卵成熟におよんだ影響は、その胎児が大人になって自身の子どもを出産する際に現れる。つまり、母体の妊娠中の栄養条件の悪化や環境の変化は、その胎児の胎児、すなわち孫の世代になって顕在化する。このような効果が、『おばあちゃん効果』と呼ばれている。

おばあちゃん仮説

 ヒトは閉経によって卵子が成熟しなくなると、妊娠しなくなる。一般的に、閉経は50代以降になるとみられるようになる。

 閉経という現象は、ヒトとシャチとゴンドウクジラにのみ確認されている。他の動物には閉経はなく、生涯を通じて妊娠・出産が可能である。生命の大原則が『生殖』にあることを考えると、生命活動が維持している限りは生殖活動が可能であることは自然といえる。すなわち、生命として成熟し、生殖活動が可能となって以降は、生殖可能期間と生存期間は一致するのが自然である。
 それでは、なぜヒトの場合、生殖活動が可能な期間と生存期間に大きな開きがあるのか。この仮説としてあげられるのが、“孫という新しい生命の世話をすることで孫の生存確率を高めるために存在(生存)する”という考えである。このような仮説が、『おばあちゃん仮説』と呼ばれている。

◇参考文献
理系総合のための生命科学 第3版〜分子・細胞・個体から知る“生命”のしくみ

◇参考サイト
なぜ人間とシャチだけ閉経するのか?
シャチに更年期? 閉経するまれな動物

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