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【追記】《医学・生理学賞に本庶佑(ほんじょ・たすく)氏》/2018年、ノーベル賞の受賞に最も近いといわれる日本人科学者

▼最新情報をみる(10月1日18時45分更新)↓
 本日2018年10月1日から、生理学・医学賞を始めとする5部門(物理学賞、化学賞、平和賞、経済学賞)が発表となる。(※文学賞は、選考委員のセクハラ問題のために見送られ、代わりに今年限りの新しい賞が発表される)
 『国立大学法人化』と『科学研究の衰退』で触れたように、近年では日本の科学技術の衰退が懸念されつつある。それだけに、今年のノーベル賞受賞によって今後の日本の科学技術研究の弾みになることが期待される。

 以下では、受賞が期待されている日本人科学者と、その研究内容について紹介する。

細野秀雄教授(東京工業大学)

 高精細・低消費電力の液晶ディスプレイ開発に大きく貢献した『IGZO半導体』の生みの親。携帯電話などに広く用いられている技術。
 一時期、大きな盛り上がりを見せた高温超伝導研究が下火になりつつあった中、2008年に細野教授が世に送り出した『鉄系超伝導体』は、世界の研究者を驚かせた。この論文はその年の引用件数世界一を記録するほどの反響を呼んだ。
 また、細野教授はカルシウム・アルミニウム・酸素という、ありふれた元素の組み合わせでできた『C12A7』という物質から半導体や伝導体を創り出すことにも成功している。
 さらに、2012年にはC12A7を用いて『窒素固定』と呼ばれる反応の触媒を創り出した。窒素固定は、農作物の肥料に不可欠なアンモニアを空気中の窒素から合成する反応であり、人類の食糧生産の3分の1を支える最重要な化学反応である。なお、現在おこなわれている方法は多くのエネルギーを消費するため、これに代わる低エネルギー消費の窒素固定法が課題のひとつとなっている。

藤田誠教授(東京大学)

 水の分子は、3つの原子が『くの字型』に結びついた単純な構造である。しかし、冷やすだけで六角形の結晶を作る。このように、自然と秩序ある系が組み上がることを『自己組織化』と呼ぶ。生物の成長やヒトの社会の形成なども、自己組織化に含まれる。この現象に分子の面から迫っているのが藤田誠教授(東京大学)である。藤田教授は金属イオンとそこに結びつく『配位子』と呼ばれる化合物を設計することで、自然に“かご状多面体”が組み上がることを実証した。その応用は多方面に及んでおり、例えばケージの内部に閉じ込められた分子は、外部空間にあるときとは異なる反応性を示すことが分かっている。分子もヒトと同じように、環境によって振る舞いを変える。
 最近では、配位子によって組み上がったネットワークを利用した画期的な分析技術を編み出した。今までは分析が難しかった化合物でも、この方法ではごく微量で詳しい構造が割り出せるようになる。医薬品開発や健康診断、科学捜査などに広く革命を起こしうる技術である。

吉野彰・旭化成名誉フェロー

 『リチウムイオン電池』の開発者である吉野彰氏(旭化成名誉フェロー)も、ノーベル賞の受賞の可能性が高い研究者のひとりである。現在では世界中の携帯電話やノートパソコンにリチウムイオン電池が採用されている。リチウムイオン電池の電極には当初、白川英樹(2000年ノーベル化学賞)らの開発した、導電性高分子が用いられ、そのコンセプトが固められた。その後、導電性高分子を炭素材料で置き換えて危険性のある金属リチウムを生じさせない工夫が行なわれ、安全かつ高容量のリチウムイオン電池が作り出された。現在は世界の自動車産業でEVシフトが進んでおり、ガソリン車・ディーゼル車から電気自動車への転換が世界的に進行しつつある。その中心部となるリチウムイオン電池の改良は、自動車業界のみならず産業界全体の焦点ともなっている。

石野良純教授(九州大学)

 生化学方面で受賞が有力視されているのが、DNAの二本鎖を狙った部位で正確に切断する『ゲノム編集』と呼ばれる技術である。対象となる遺伝子を切断して機能を失わせることが可能で、外部から望みの遺伝子を組み込むこともできる。これまでにもこうした技術はあったが、『CRISPR/Cas9』というシステムはスピードと正確性において優れており、遺伝子治療や品種改良などへの応用の可能性が広がった。原理的には、優れた容貌や運動能力を持った『デザイナーベイビー』を作り出すようなことも考えられている。
 このCRISPR/Cas9システムの基礎となる発見をしたのが、石野良純教授(九州大学)である。石野教授は1987年、ある種の細菌のDNAに奇妙な繰り返しのパターンを持った遺伝子配列を発見した。後に、その配列はCRISPRと命名された。この配列はウイルスのDNAを切断・破壊するためのもので、現在急発展中のゲノム編集技術はこれを応用したものである。なお、CRISPR/Cas9は特許をめぐって2つのチーム間で裁判が繰り広げられた経緯もあり、受賞は先取権の争いが落ち着いてからになる可能性もある。

小田兼利・日本ポリグル会長

 小田氏は社員30人ほどの中小企業『日本ポリグル』の会長である。小田氏が開発したのは、汚水を瞬時に浄化できる粉末である。納豆の糸はポリグルタミン酸という物質でできており、ここにカルシウムを加えたものを汚水に放り込んで混ぜるだけで汚れの成分をからめとって沈殿する。この沈殿を濾し取ることで、悪臭を放つ池の水が飲用基準を満たす透明な水に変わる。
 小田氏はバングラデシュやソマリアなどの発展途上国でこの発明を活用し、汚水による感染症の蔓延する地域に清潔な水を届けている。電気も複雑な機械も必要としない小田の浄水法は、こうした地域の支援に適している。近年のノーベル賞は、2015年生理学・医学賞の大村智氏らをはじめとして、貧困の解消などに役立つ技術を顕彰する例が多くあるといわれている。そうであれば、数百万人に安全で清潔な水を提供し、雇用まで創出している小田氏の功績も受賞の可能性が高いといえる。

坂口志文(しもん)特任教授(大阪大学)

 免疫のブレーキ役の仕組みを解明したことで、有力視される日本人研究者が、大阪大学の坂口志文特任教授である。免疫が過剰に働くのを抑える『制御性T細胞』を発見し、ノーベル賞の登竜門とされるカナダのガードナー国際賞を2015年に受けた。薬の開発に向けた臨床試験も進んでいることから、受賞の可能性が高いといえる。

本庶佑(たすく)特別教授(京都大学)

 免疫チェックポイント分子『PD-1』を発見した京都大学の本庶佑(たすく)特別教授も候補のひとり。この発見をもとにがん治療薬『オプジーボ』が開発され、世界中で使用されている。

森和俊教授(京都大学)

 カナダのガードナー国際賞と同様にノーベル賞の登竜門とされる米ラスカー賞の受賞者のひとり。細胞内のたんぱく質の品質管理に関わる仕組みを解明した。

10月1日18時45分追記

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は1日、今年のノーベル医学・生理学賞に京都大名誉教授の本庶佑氏(76)を含む2名を選んだと発表した。『PD-1』を発見したことが評価された。これを元に、がん治療薬『オプジーボ』が開発された。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれる。日本の受賞は、2016年にオートファジーの仕組みの解明によって受賞した大隅良典氏以来で2年ぶり。日本人のノーベル賞受賞は、アメリカ国籍を含めて計26人となった。

◆ノーベル賞各賞の発表日程(日本時間)
・10月1日(月)18:30~ 医学・生理学賞
・10月2日(火)18:45~ 物理学賞
・10月3日(水)18:45~ 化学賞
・10月5日(金)18:00~ 平和賞
・10月8日(月)18:45~ 経済学賞

◇参考サイト
2018年、ノーベル賞に最も近い5人の日本人科学者の名前
ノーベル賞、今年は誰に 来月1日から発表、日本勢の受賞は
<ノーベル賞>医学生理学賞に本庶佑氏 京都大名誉教授

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